【続】俺様王子と秘密の時間
禁断の部屋に行ったら椅子がいくつか倒れていて、その部屋の中で千秋はネクタイを結んでいた。
理由がわかって胸を撫で下ろす。
あの時聞こえた物音は椅子が倒れた音で、何かをこらえるような声は泣きだした美結ちゃんのもの。
『泣き落としもきかないんだね』
去り際に美結ちゃんがそう言っていた言葉の真意が、今わかったような気がした。
それにあの子は平気で嘘をつく子だった。
なのに少しでも疑ってしまったあたしは、なんて愚かなんだろう。
「シイがどんだけ不安だったか、お前、わかってんのかよ?」
千秋はそんな羽鳥の声を無視して、自分の席に座ったまま俯くあたしの前までやって来る。
トクン……。
近づく距離に胸が高鳴った。
そして千秋は床に片膝をついて、あたしの目線に合わせ、眉を下げて驚くくらいに優しく笑った。
――まるで“王子様”