【続】俺様王子と秘密の時間
「バカ王子も謝るんだな?」
羽鳥が口を開いた。
すっかり忘れていたあたしはドキリ……として肩が跳ね上がった。
「まだ居たのか、お前」
頭上で響く声。
あたしを抱きしめたまま低く呟いた千秋に、さらにドキドキした。
「いい加減離れろよ?見ててうぜぇんだけど」
恥ずかしい……。
千秋は動揺するあたしから静かに身体を離して、床に散乱する誰かの教科書を拾い上げた。
ソレはさっき羽鳥が机を蹴り飛ばした時に散らばった教科書だ。
「お前も早く帰った方がいいんじゃねぇの?」
「は?」
眉を寄せて首を傾げる羽鳥を見て、千秋は勝ち誇ったように笑う。
「椎菜」
呼ばれてふと顔を上げる。
千秋は手にした教科書でお互いの口元を隠すようにして、あたしにそっと優しいキスをした……。