【続】俺様王子と秘密の時間
どこから伸びてきたのか、いきなり手首を掴まれて勢いよく引っ張られた。
「ぎゃあああ!オバケぇ……!」
あたしは突然のことに何が起こったのかわからず、恐怖のあまり叫んでしまう。
だけどすぐに“誰が”そんなことをしたのか、あたしはわかってしまった。
甘い香りがふわりと優しく鼻を撫でたから。
この香りは……
「オレに向かってオバケだと?」
きゃあああ。
暗い部屋の中で千秋の低い声が近くで聞こえた。
「どの口が、言うのかな?」
挑戦的とも言える声がして、あたしの髪に千秋の指先が触れる。
今日昼休みに会ったばかりなのに、千秋に触れられると胸の奥が熱くなる。
“恋”を色で例えるなら、あたしの恋はたぶんピンク色。
淡い淡い、桜色のように。
少しずつ、染まっていくの。