【続】俺様王子と秘密の時間
玄関を出る時に千秋と目が合ったけどすぐに逸らされてしまった。
夜は風が冷たくて寒い。
黒いバイクのエンジンが響く。
「シイ、これ着ろよ」
バサッと飛んできたのは羽鳥の上着だった。
少しためらったけれどあたしは上着を貸りることにして袖を通す。
ブカブカだけどすごく暖かい。
「おい、早く乗れ」
「うん」
急かされてバイクの後ろに乗る。
羽鳥のバイクに乗るのは何回目かな?
馴れなくてちょっと緊張する。
「掴まんねぇの?落ちるぞお前」
なんて言いながらヘルメットを被せてくれて、羽鳥はハンドルを握りしめてバイクを発進させる。
夜道に光るライト。
伝わる羽鳥の体温。
ギュッ……と羽鳥の身体に回した腕に力をこめるとさらにシトラスの香りがして切ない痛みを放つ。
こんなに近いのに何故か遠い。