【続】俺様王子と秘密の時間
溢れる感情に嘘はない。
「好きだから一緒に……」
「バカじゃねぇの?」
買い物袋を強く握りしめた羽鳥。
冷たい風が頬を撫でる。
「アイツのこと何も知らねぇじゃん。好きだから、なんて言ってっけど、何を知ってるわけ?」
「知ってるもん……」
バカにした物言いに黙ってはいられず言い返したあたしに、羽鳥はクスッと笑って近づいてくる。
「ふーん。じゃあ、アイツの嫌いなモノは?」
「それは……」
「好きなモノは?」
「……っ」
言い返す言葉が見当たらない。
勝ち誇ったように意地悪く笑った羽鳥に、千秋のことを何も知らないんだと思い知らされたような気がして、俯くしかなかった……。
「アイツのとこには行かせねぇよ」
「やっ……」
羽鳥があたしの肩を掴んで駐輪場の壁へ思い切り押しつけた……。
手の内からケーキの材料が入った袋が滑り落ちた。