【続】俺様王子と秘密の時間
黒澤拓海が残したタバコの煙は、暗闇を舞ったあと夜空に消えた。
「……バイトの人なの。っていっても、あたしは明日までだから、もう関わることはないんだ……」
重い雰囲気をどうにかしたくて、あたしは必死で口を動かした。
羽鳥の背中に向かって声をかけても、なんの言葉も返ってこない。
「アイツ……シイのこと、マジで好きなんだな」
背中を向けたまま話す羽鳥。
スーパーの袋を握る手に力が入っていた。
「じゃなかったら、あの冷血王子がわざわざお前を連れ去りにバイト先まで行ったりしねぇだろ」
黒澤拓海との会話は羽鳥に聞こえていたんだ。
羽鳥は無言で鍵を取り出してバイクに股がるとエンジンをかけた。
「ほんとは、このままお前をかっさらってやりてぇけど、んなことしたらお前、泣くだろ?」
力なく言った羽鳥の切れ長の瞳が揺れる。