【続】俺様王子と秘密の時間
静寂に包まれたこの場所にけたたましいくらいのエンジンが響く。
「お前の泣き顔なんて見たくねぇし、これ以上嫌われたくねぇ」
駆け寄ったあたしの頭をそっと撫でる。
羽鳥にこんな顔をさせたいわけじゃないのに言葉が見つからない。
何か言わなくちゃ羽鳥が行ってしまう。
「羽鳥、ごめ……」
「行けよ……!アイツ、待ってんじゃねぇの?シイのこと」
手にしていたスーパーの袋をあたしに投げる。
無理に笑ってみせる羽鳥を見て、喉の奥が熱くなって苦しかった。
弱々しい笑顔が消えてしまいそうだった。
「嘘ついて悪かった……」
ハンドルを握ってバイクを発進させる直前に、消えてしまいそうなくらい小さな声で呟く。
待って……と思い手を伸ばして羽鳥の服を握ったけれど遅かった。
振り返ることもなく羽鳥は走り去っていった。