【続】俺様王子と秘密の時間
貸してくれた羽鳥の上着には、シトラスの香りが染みついている。
大きくて暖かい……。
なのに心は全然、温まらない。
あたしは材料の入った買い物袋を拾い上げる。
すぐ側にはさっき羽鳥が投げたスーパーの袋が落ちていた。
羽鳥はコレをずっと握りしめていた。
「……っ」
拾い上げて中を見たとたんに胸が震えた。
苺のお菓子がたくさん入ってた。
苺チョコクッキーに苺キャンディ、苺マシュマロ。
それから大好きな苺ミルクも入っていた……。
「はと…り……」
名前を読んでも羽鳥は居ない。
いつもいつも上手くいかなくて、大切な人を大切に出来ない……。
どうすれば傷つけずにいられるんだろう。
あたしは走って千秋の家まで帰った。
「遅かったな?」
家の前では千秋が立っていた。