【続】俺様王子と秘密の時間

◆キスの温度…



ドキリッ……。

だ、誰なの?

とても悪いことをして逃げてしまったような気分になる。

身体が跳ね上がったあたしは恐る恐る屋上の入り口に視線を移す。


その瞬間、微かに人影が揺れた。


――カシャッ!


えっ……?

何の音かと思ったら現れた人物が首からさげたカメラを構えて、シャッターを切った音だった。


もう誰だかわかったあたしは名前を口にする。



「りょ、涼くん!?」

「あれ……?先輩?」


仔犬みたいに可愛いらしい瞳をまん丸にする涼くん。

構えていたカメラをおろして顔を見せた涼くんは、あたしよりも驚いた表情を浮かべている。

涼くんはこっちに向かって歩いて来た。



「な…何してたのよ!?涼くんまさか、また隠し撮りしてたの?」


とっさに黒澤拓海の腕から飛び出したあたしは、ジロリと涼くんに疑いの目を向けた。

 

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