【続】俺様王子と秘密の時間
聞き間違えだと思った。
だけど確かに“シズナ”って聞こえた。
「やだ!離して!」
痛いくらいの抱擁……。
あたしは黒澤拓海の両腕を解いて逃げようとしたけど出来なくて。
「キス、しようか?」
ふざけた口調で言うと側まで来た人物に向かって舌を見せて笑い、あたしの顎を持ち上げた。
キスされる……!
もうダメだと諦めたその時……
「堂々と人の女抱きしめんの、やめてくんねぇ?」
視界いっぱいに映りこんだのは、黒澤拓海の肩に手をかけて冷笑する千秋の見下すような表情……。
こんなことろ千秋には見られたくなかった。
顔を伏せるあたしの腕を掴んで、黒澤拓海の中から引きずりだす。
「王子様のお出まし?タイミング悪いなぁー」
聞こえていないふりをする。
千秋は黒澤拓海を瞳に映すことさえしない。