【続】俺様王子と秘密の時間


「あ、あの、あたし帰る……」


気まずいなんてもんじゃない。

はーちゃんの彼氏である佐久間くんに、こんなシーンを見られるなんて!

あたし、もうダメ……。



「……川村さん、ごめんね?」


千秋の腕の中から抜け出すあたしに、佐久間くんはほんとに申し訳なさそうな顔で謝ってきた。



「佐久間くんは悪いことしてないんだから、謝らないで……?」


あたしが迂闊だったのだ。

服を整えドアに手をかけると、千秋に呼び止められ、振り返った。



「ごちそーさん」


パチッとウインクして、さっきまであたしに触れていた指をペロッと舐めた。


かあああああああ。

そんな涼しい顔で言うなんてっ!



「誰かに見つかんなよ?」

「わ、わかってるもん!」

「川村さん!西山先生が女子の階の見回りしてたから気をつけて」


ゲッ……。

一気に憂鬱だよぉ。

 

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