【続】俺様王子と秘密の時間
確かにあの時、旅館の前でそう言った羽鳥の声が聞こえる距離に千秋は居た。
けれど千秋はまるで聞こえていないようで、あたし達の方に振り向きもしなかったんだ。
そのことをあたしに尋ねてくることもなかった。
「今になってバラすってどういう意図だ?秘密にしてんのが嫌って言ってるみてぇに聞こえんぞ?」
あたしの感じた疑問を羽鳥が口にする。
どうして突然、昼休みに堂々とあたしの元へ来たのか、今更バラそうかと言ってきたのか。
「オレがシイに本気だって気づいたからか?」
羽鳥の真っ直ぐな声が響く。
「ガキの頃から一緒だったんだ。お前が本気だってことくれぇ、お前見てりゃわかんだよ」
小さい頃からずっと一緒だった幼なじみのことだから、顔を見ればわかるんだ。
そういう関係は本来なら素敵なことだ。