【続】俺様王子と秘密の時間


「てめぇなんか地獄に堕ちろ」


重い沈黙を破った羽鳥は吐き捨てると、けたたましいエンジン音を響かせ駐輪場へ消えていった。



「隙だらけなんだよ、お前」

「うっ……」

「だからキスなんかされんだよ」


ドクンッ……。

そのことについて千秋はあたしに触れてこなかったのに、今いきなり言うから驚きを隠せなかった。


感情の読み取れない顔であたしを見つめる。



「あたし……」


千秋は最後まで聞かずにざわつく昇降口へと去って行く。


あたし、今なにを言おうとした?

言い訳にしかならないのに、それを言って千秋になんて言ってほしかった?

自問自答してわからなくなる。



怒ってるのならその怒りをぶつけてほしかった。

言いたいことがあるのならどんなにキツい口調でも、全部言ってほしかった。

あんな冷たい瞳をする千秋を見ると、また不安が煽られる……。

 

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