【続】俺様王子と秘密の時間


近い距離であたしを見つめる羽鳥の瞳は、いつだって優しくて。

あたしを“シイ”って呼んでくれる声を聞くと何故か安心した。

この教室でいつもふざけて数えきれないくらい笑い合った……。


全部、羽鳥だったからあたしは嬉しかった……。

羽鳥の気持ちをどう受け取ったらいいか、あたしの気持ちをなんて伝えたらいいかわからない。



「羽鳥……」


声が震えるから痛いくらいに唇を噛みしめた。



「あたしね……」


あたしの気持ちを伝えようとすればする程、羽鳥をちゃんと見れなくて、溢れて泣きそうになる。



「泣くなよ……」


こんな時でさえ羽鳥は優しい。

あたしは今から羽鳥を傷つける言葉を吐くというのに。



「……あたし、こんなんだけど、一応、千秋の彼女なんだよ……」


傷つけることしか出来ないあたしを、それでも羽鳥はあたしに手を伸ばして頭を撫でてくれる。

 

< 545 / 658 >

この作品をシェア

pagetop