【続】俺様王子と秘密の時間
◆さよならを君に
おぼろげな夢を見た。
夕暮れ時に伸びた3つの影法師。
黒いバイクと赤い傘。
夢って不思議なもので最初はそんなシーンから始まったのに、途中からどしゃ降りの雨と強い風の中にあたしは居た。
夢に出てきた男の子の顔は曇りがかっていてわからなかったけど、あたしになにか伝えようとして口を結んだ彼。
そのあとあたしに触れた彼は言葉を発して去って行った。
理由はわからないけどあたしは彼を呼び止めていた。
何度呼んでも振り返ることのない彼は人の波に呑まれていく。
夢の中のあたしは泣いていたのかとか全くわからない。
そんな夢を見たのだ。
どうしてそんな夢を見たのかな?
昨日の千秋の顔が脳裏に焼きついていたからか、羽鳥の台詞がぐるぐると駆け巡っていたからか。
「シイおはよ!」
学校に着くまでの間ずっと考えていた。
コウちゃんがニコニコして声をかけてくる。