【続】俺様王子と秘密の時間


「……やだ……待って……」


心の中で何度も何度も千秋の名前を呼んだ。


――もう、戻れない。

後悔したって1分1秒たりとも時間を戻すことは不可能だから。



千秋は人の波に呑まれて消えた。



ほんとは今日会ったらあたしの気持ちを打ち明けようと決めていたの。

だけどあたしのほんとの気持ちを伝えないまま千秋との関係が、秘密が、完全に終わってしまった。



――好き、好き、好きなの。

だからどこにもいかないで。

強くなるから、もう逃げないから離れていかないで。



何度願っても声にならなかった。

この瞬間あたしはほんとに大切な人の存在にやっと気づいた……。



さよならの言葉の変わりの口づけは、今までのキスの中で一番悲しいキスでした。

 

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