【続】俺様王子と秘密の時間


『なんでお前はオレじゃダメなんだよ……!』


――ガツンッ!

あたしに被せてくれていたヘルメットを、アパートの塀に力一杯投げつけた。



耳を塞いでしまいたい。

けれど羽鳥からも逃げることは、もう絶対にいけないことだと思った。



『なんでだよ……なんでオレの幼なじみなんだよ……』

『……っ』


胸が張り裂けてしまいそう……。

嗚咽を抑えきれなくなって崩れ落ちそうになって、そしたらいきなりはーちゃんの声が蘇った。



『恋に師匠なし』


誰も教えてくれないんだとはーちゃんはあたしに教えてくれた。

自分なりに“告白”するつもりでいたのに、それが出来ることもなく千秋はあたしから離れた。

羽鳥の切れ長の瞳が揺れていた。


―――――――――……



全てがからっぽになった。

そんな気持ちを抱えたまま終業式を迎えた。

 

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