【続】俺様王子と秘密の時間
甘い香りに包まれる。
「……離れたくない」
自然と口をついて出た言葉に、林檎みたいに頬を赤らめるあたし。
「逃げられると思うなよ?オレの腕の中からな」
酷く甘美な響き。
千秋の揺れる髪、触れる指先。
椎菜って呼んでくれる声。
千秋だから特別で、千秋だからドキドキした。
全部、千秋が初めてなんだよ。
「きゃっ……!」
視界が揺れてあたしの足がふわっと宙に浮いた。
なにが起こってるか理解するのに時間がかかった。
だって千秋はあたしを抱き上げているから……。
「なにも要らねぇ。お前がいればな」
――心ごと、揺れた。
あたしの心をまるごと奪うような言葉に、ずっと我慢していたモノが溢れ出した。
千秋の体温を感じることがなにより嬉しくて。
こんなに近くに千秋が居てくれることが幸せで、溢れる涙を我慢することが出来なかった……。