運命
第?選択 畑中の道程
パトカーのサイレンがけたたましく鳴り響いている。折角の静かな朝が台無しだ。私は冷蔵庫から消費期限2日過ぎの牛乳を取りだし一口飲んだ。まだ大丈夫だと判断し、次は三口飲んだ。そのままキッチンに置いてある食パンをトースターに入れ、3分待つ。
その間に玄関の新聞受けを見に行く。ここ2,3日見ていなかったので新聞とチラシが少したまっている。それを乱暴に取って部屋に戻った。ちょうどパンが頭を出していたので、それを掴み一口頬張る。テレビをつけるとニュースキャスターが慌ただしく原稿を読んでいた。

「本日明朝、東京都霞ヶ浦市の金沢さん宅で長女の朋美さんと見られる女性が、変死体となって発見されました。」

そこで画面が被害者の家をバックにした中継現場へと変わる。

「本日明朝、こちら金沢さん宅にて長女の朋美さんと見られる女性が、変死体となって発見されました。遺体は鋭利な刃物によりバラバラにされ破損が激しく、詳細な死亡原因は分かっておりません。繰り返します…」

なるほど。だからさっき携帯電話を見たら着信履歴が32件もあったのか。

丁度電話が鳴った。32件も着信履歴を残した人物からだった。

「はい?」
「なにをしていた畑中!」

鼓膜が振動するのが分かった。

「今日はオフなので寝てましたよ…」
「テレビをつけろ!」

もうつけてます。と返事しようとする喉を抑え、事件ですか。という返事に変更した。

「とにかく霞ヶ浦までこい!」

そこで電話が切れた。切れたというより、切られたといった方がよい。
そのまま私はダラダラとスーツに着替え、ぶつぶつ文句を垂らしながら車を出した。
車中でラジオをつけると、先程と同じキャスターの声が響いた。
うんざりしながらチャンネルを変え、クラシックを流した。
ラジオから流れるモーツァルトのジュピターだけが私をやさしく目覚めさせてくれた。
現場に近づくにつれてパトカーが目立ちだした。いつもと同じ光景に飽き飽きしながら視界にパトカーを入れないように車を走らせた。
現場に着くと、視界が強引に赤いサイレンに支配された。
車から降り、パトカーが視界に入らないように両手でサンバイザーを作り、立ち入り禁止のテープを監視している警官に警察手帳を見せ、くぐった。
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