運命
私は気付いた。血の匂いが強烈にする部屋には血痕一つ残っていないのだ。
綺麗に整頓された部屋がそのまま残っている。

「どういうことですか?」

私はすぐに相場警部に確認した。

「私も理解に苦しんでいるところだ。遺体は金沢朋美。17歳。今朝6時頃に母親により発見。死亡時刻は現在検査中だ。ちなみに白百合学院高校の生徒で2年生だそうだ。もう遺体は運ばれちまったが、体のパーツが関節一つ一つにバラバラに分けられて死んでいた。まぁ他殺に間違いないがな。しかし、お前の言うとおり、どういうことなのかさっぱりわからない。あれだけバラバラにされていて、血が出ないわけがない。切り口からも血液が出ていなかった。今血痕が拭きとられた形跡がないか調べているが…」

そこまで言うと現場を調べていた検識官が相場警部の元へと来た。

「相場警部、血痕を拭き取った形跡も、飛散した形跡もありませんね。一体どういうことなんでしょうか…」

相場は難しい顔をした。それにしてもひどい殺され方だ。なのに血は一切出ていない。切り口からも出ていなかった…。血を完全に体から抜いてから殺したとしても、血液だけが体液というわけではない。しかしそれが一切見当たらないというのだ。
私は、母親はどうしたのかと警部に尋ねた。

「今は霞ヶ浦署で取り調べを受けている。しかし、混乱状態に陥っているようでまだ一言もしゃべっていないようだ。無理もない。」

私はそれを聞き、ため息をつきながら、部屋を見渡した。綺麗に整頓された部屋の片隅に教科書が積まれた勉強机が置いてあった。高校生なのだから当たり前のように思うが、すこし様子がおかしい。

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