運命
「Control your own destiny…」

そこまで読むと実はそれ以上読むのをやめた。

「自分の運命を操りなさい……これ以上は分かりません……」

慎吾が驚いた顔で実を見つめる。
谷口も少し驚いた様子で話を続けた。

「神埼君、珍しいわね…。英語、得意だからこれくらい簡単に訳せるはずでしょ?」
「……分かりません」

実はそう言って静かに席に座った。
慎吾がどうしたんだ、と尋ねてくる。実は黙ったままだった。

「まだ、しんどさが抜けてないかな?じゃぁ代わりに竹中君読んでくれる?」
「…おっけー」

慎吾が立つ。教科書を眺めながら英語を読み始める。

「Control your own destiny or someone else will.」

そのあと、ゆっくりやくし始めた。

「自分の運命を操りなさい。さもないと、他の誰かがそうするでしょう。」

慎吾が席に着く。心配そうに実の顔をうかがっている。
実は平常を保とうとした。唇をぎゅっとかみしめる。

「偶然だ…偶然だ…偶然だ…誰かが操る?流転?ばかばかしい…」

実は自分をなだめようとした。しかし、左腕からの鈍い痛みがそれを否定するかのように訴えかけてきたのだった。
手の震えが止まらなかった。
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