君だけのサンタクロース
初めて会ったときは、ホンマ無愛想な子やな、って思った。
あんま笑わへんしどちらかというと無表情に近い感じ。
リキは心春ちゃんが来る前に“色々と複雑な奴やねん”と俺に言った。
リキから心春ちゃんの10年前の話をよう聞かされてた俺はずっとずっと彼女が来るのを楽しみにしとった。
まあ、リキ程ではないけどな。
“あいつなんか嫌いや”
とは言ってたけど
“俺の10年間返せ”
とは言ってへんリキの心には、まだ心春ちゃんがおるっちゅう事や。
「あたしね、家から追い出されて此処に来たの。」
リキの話題を逸らすように心春ちゃんは言った。
その表情があまりにも哀しそうで、目を奪われる。
「噂とか聞いてない?」
「・・・噂?なんの?」
俺はリキからしか聞いてへんから、心春ちゃんの事情はよく知らんかった。
「自分で言うのもなんだけど、東京の大きい病院の娘なの。」
「あ、それならわかるわ。あすこの診療所も心春ちゃんのやろ?」
北風がさっき買ったばかりのカフェオレを冷ましてゆく。
「あたしの存在が本物だったらね」
「・・・どうゆうことなん?」