君だけのサンタクロース
煙草の入っている反対側のポケットに手を突っ込む。
取り出したその瓶は最初で最後のサンタからのプレゼント。
手の平から少しはみでるくらいの大きさで、その中身は七色に彩る金平糖。
「あ、もう少しでなくなりそう…」
何故か捨てれなくて、中身がなくなったら買ってまた瓶にいれて。
サンタの正体を少しだけ覚えてる。
小さな男の子で、クリスマス前にゆびきりをした約束。
その約束が何だったのか、男の子の顔も名前も覚えていない。
けど、あたしにとって最初で最後の暖かい思い出。
ここに来たのは、それが少し気になったから。逢える可能性がすこしでもあるはず。
例え彼がいなくても、それでいい。
せっかく切符まで配慮してもらったのだから、旅行がてら来てやろうと想って。
でも、おばあちゃんが迎えに来なかったら、帰ろう。
必要とされない場所はもう、うんざりだから。
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