君だけのサンタクロース


煙草の入っている反対側のポケットに手を突っ込む。

取り出したその瓶は最初で最後のサンタからのプレゼント。
手の平から少しはみでるくらいの大きさで、その中身は七色に彩る金平糖。




「あ、もう少しでなくなりそう…」




何故か捨てれなくて、中身がなくなったら買ってまた瓶にいれて。


サンタの正体を少しだけ覚えてる。


小さな男の子で、クリスマス前にゆびきりをした約束。

その約束が何だったのか、男の子の顔も名前も覚えていない。



けど、あたしにとって最初で最後の暖かい思い出。



ここに来たのは、それが少し気になったから。逢える可能性がすこしでもあるはず。

例え彼がいなくても、それでいい。

せっかく切符まで配慮してもらったのだから、旅行がてら来てやろうと想って。




でも、おばあちゃんが迎えに来なかったら、帰ろう。




必要とされない場所はもう、うんざりだから。




.


< 15 / 215 >

この作品をシェア

pagetop