君だけのサンタクロース
「お前か?古谷さんとこの孫。」
急に聞こえたその声に振り返ると、
綺麗な黒髪の男があたしを睨み付けていた。
そして『古谷』は母の旧姓。
あ、…そうゆうこと。
迎えに来ることすら煩わしいんだ。
あたしはもう一本煙草を取り出して、火を付けた。
「…そうだけど?」
もう、帰ろう。
おばあちゃんが迎えにきてくれない、もうそれだけで充分。
あたしの居場所は
ここにもないって分かったから。
深く吐いた煙もすぐ消えた。
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