君だけのサンタクロース
「雪、ふんのかなー・・・」
駅を出ると、空を見上げてただそんな事を呟いた。
周りを道ゆく人はさっきの駅員と同じような目であたしを見ると足早に通りすぎて行く。
…ま、しょうがないか。
派手なメイクに派手な洋服。どうみてもこの土地には不似合いなあたし。
東京で産まれて、東京で過ごしてきた。
父は都心にある立派な大病院の医院長。母はセレブ主婦として優雅な生活を送り、年の離れた長男の兄は医院長次期候補者としても人目置く存在。そして姉は有名な大学を今年お受験。
そして末っ子のあたし、観月心春(ミズキコハル)。現在高一である“筈”の15歳。
高校は2ヶ月前に辞めた。
と、言えば自主的な物に聞こえるけど、正確には“辞めさせられた”。
在学中に煙草で2回停学、で最後は教師殴って強制退学。
教師を殴った拳は痛かった。
けれど、あたしの足元に情けなく転がった大人を見てなんともいえない快感を感じ、
“ザマーミロ”そう心の中で薄く笑った。
結局その事は大した問題にもならず、“退学”という言葉に落ち着いた。
世間には極秘に、そう親が裏金回したってこともあったけど。
でもそれはあたしを守るためじゃなく、自分達のため。
警察沙汰になんなくて、世間体に両親や兄姉の名前に傷は付けなくて済んだ、
なんて…ふざけんな。