君だけのサンタクロース
「3時やな。もう、そろそろやろ」
「え・・・?」
心春の腕を掴んで立たせた。
今度は優しく掴んだつもりや。また振り払われたくないから。
「ホラ、謝りに行くで」
心春はようやく意味がわかったらしくコクンと頷くと下を向いて歩き出した。
昔はそのたび想った。
俺が、こいつを守りたい、って。
幼き頃の感情は、そんな“守る”とか“大切”やとか
ちゃうかったけど、それに近いもんはあった。
俺の中にも消えていった記憶はたくさんある。
覚えてへんことも、わからへんかったことも、
心春のひとつひとつの言葉が思い出させた。
あのときの心春はなくなってへん、ただそんな気がした。