君だけのサンタクロース
それからどうやって帰ったかなんて、覚えてない。
気が付いたら自分の部屋で寝転んでた。
やばい、記憶飛ぶ程混乱してる。
キスだって、それ以上の事だって今までたくさん経験してきた。
そんなあたしがドキドキする事なんかじゃない。
でもなんなんだろう、
…この気持ち。
「ゔー!わけわかんないー!」
「それは恋やな。」
「うっわ!ばーちゃんいつからそこに!?」
慌てて扉を見ると、気付かぬ間におばあちゃんがにんまり笑ってあたしを見ていた。
「帰ってくるなり魂抜けた顔してふらふら〜っと2階上がってくもんでな、心配しとったんよ」
そんなおばあちゃんの手にはお盆があり、それをあたしに差し出した。
…あ、あたしご飯食べずに部屋着ちゃったんだ。
てゆうか…それは“恋”ってなに!?
「なんべん声かけても気づかへん程、そんないい男と巡り合えたんか?」
「ちっ…ちがっ!」
「いい男ちゃうん?今日リキくんと出てったやん」
“リキ”
その名前が出ただけで、ビクッと肩を揺らすあたしを面白そうな顔してにんまり笑うおばあちゃん。
……これ、なんかバレてるよね?
「ばーちゃんには何もかもお見通しやねん」
「・・・それはちょっと。」
もう一度ニヤリと笑ったおばあちゃんに恐怖心を覚えた。
もうおばあちゃんには絶対逆らわないようにしよう。
おばあちゃんは“ちゃんと食べるんやで”と、あたしに言葉を残して部屋を出て行った。
窓からは、隣の家の灯りがチラチラ見える。
それにまた心臓が音を立てた事に気付いて、カーテンを勢いよく閉めた。