ハンソク★リレー the Last name(仮)
男は一瞬うれしさと驚きのいりまじった複雑な表情になった。

俺はというと思わず「ホラ!」とか鬼の首を取ったような誇らしい声を上げ、歩み寄り、肩を掴んでゆさぶり、自分がいかに素晴らしいかを誇示しようとしたのだが、

謎の男の立場に立って考えてやるとここで勝ち誇るのはどうかと、男も男で小さい声で「そうだった、そうだった」とつぶやきながらカチャカチャと装着を始めていたことだし、まあ、ごちゃごちゃと色々考えているあいだにも俺のセンスがいかに凄くて、あのアドバイスがどれほど的を射たものであったか、そのアッピールするタイミングは完全に逃したわけだ。

そして、仮面はとどこおりなく装着されたのだから、まあ、いいんじゃないかな。ピカリーン。

俺は楽天的な男なんだし。


しかし、なんでわざわざ仮面を取り外したのかという疑問は残った。

それに、上記のことからこのマスクの装着、脱着は今日が初めてじゃないしても、まだ数回のはず。

いや、自分の持ち物ですらない可能性にも思いを巡らせながら謎の男は何歳ぐらいなんだろうかというようなことを考えながらぼんやりと見ていた。

でも、そんなことはたいした問題じゃない、だって俺は楽天家だからな。

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