地味子の秘密 其の壱 VS黒羽の大妖怪
「ありがとな、杏。」

「どういたしまして…。」

優しく微笑む陸を直視できない。


どうしよう…心拍上がってる!



「マジいってぇ…。」

陸が唸りながら言う。



あっそうだ!


「陸、腕出して?」

「は?」

「いいからっ!

傷を早く治してあげる。」

あたしは眼鏡とヘアゴムを取る。


抑えていた霊力が戻る。


陸の腕に印を置き、呪文を唱える。


「悪しき傷、傷みを還りて治癒と為せ。」


ポワーっと小さな光が、陸の腕を包み込む。



「杏?…なんか痛み引いたんだけど…?」


「霊力を送って、痛みを治す力に変えたからね。半日もすれば傷なくなるよ。」


「触ったら霊力送れんの?」

「まぁ大体はね?」


あたしが答えると、陸はニヤッと笑った。


え゛なにその笑い…。
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