地味子の秘密 其の壱 VS黒羽の大妖怪
無理矢理左手を動かし、符を指に挟んで刀印を作る。
「…我は、陰陽を司るものなり!
ーー…この悪霊を搦め捕れ。搦め捕り玉わずは不動明王の御不覚これに過ぎず…!」
クロノスは、目を見開き、固まったまま
あたしの口元に笑みが宿る。
これを狙ってた
呪詛に蝕まれたあたしには、神に近いクロノスを倒せるだけの力がない。
ゆえに、あたしは自分の体を囮としたんだ。
必ず血肉を奴は求めてくる。
だからわざと接近して、奴の隙を伺っていた。
抵抗しないあたしを“堕ちた”と見ていた奴は、まんまと引っ掛かってくれた訳だ。
霊力の鎖で縛られ、苦痛で顔を歪ませる。