地味子の秘密 其の壱 VS黒羽の大妖怪
風はないのに
寒気がする。
「…寒いかも…………。」
両手で身体をさする。
《…こっちにおいで?》
優しい声が、あたしを引き寄せる。
だっダメダメ……!
知らない人にはついて行くなって
じいちゃんに言われたんだった!
《杏…?大丈夫だからこっちにおいで…?》
声だけなのに、手を広げて待ってくれてる感じがした。
不思議な人だなぁ……
でも………
一人でいるよりは温かいかな…?
「…寒いし……行ってみようかなぁ………」
声が、聞こえる方に歩き出す。
《…早く帰って来てくれ………》
懇願するような苦しげな声。