地味子の秘密 其の壱 VS黒羽の大妖怪
そんなに待ってくれてるのかな……
歩くスピードを速める。
ほとんど
走っている状態………
だけど
声に近付く度に、身体が温かくなっていく。
「こっちで合ってたのかな?」
走るスピードをさらに上げた。
会ってみたくなった。
優しい声の主に…………
暗い闇でも、その声だけは
温かくて優しい光になる。
暗闇に慣れた目が、誰かを見つけた。
迷わずに広げられた腕の中に飛び込む。
《やっと帰って来た……》
「えっ……?」
ギューっと抱きしめられる。
あっ………この甘い香り………
この人………知ってる………
忘れるはずがない………
「………………陸」
名前を呼んだ。