龍の世界
*****



葬儀は全て若桜さん達が仕切ってくれた


沢山の人が泣いてた

私の知らないところで
お兄ちゃんはこんなに愛されていたんだ…

















「麻綾」


「……──若桜さん」


「そろそろ中へ入りなさい。風邪を引きますよ」






全てが終わり、私はお兄ちゃんの部屋の縁側に座っていた




「疲れたでしょう?もう休みますか?」










その問いに、私は首を横に振る







「今目瞑ったら、色々思い出しちゃいそうで…」



「そうですか……では、こちらにいらっしゃい。貴女に見せたい物があります」









若桜さんは私の手を引き、屋敷の外へ出て行った








若桜さんが連れて行ってくれたのは母屋とは別の建物で、庭の竹林を抜けた先に建っている古びた洋館だった。














「ここは?・・・」


「私達の仕事場ですよ」


「仕事場?」


「事務所みたいなものですね」







若桜さんは木製の両開きの扉を開け、赤い絨毯が敷かれた階段を上がる。二階の一番奥のドアを開けると、沢山の資料やパソコンがあり、何人かが作業をしていた。





「あぁ皇也。どうかした?あれ?麻綾ちゃん?」


「柳瀬さん……?」



中に入って声を掛けて来たのはネイビーのスーツ姿の柳瀬和輝さん


眼鏡の奥の瞳は、私を写すとにこりと笑う。



若桜さんの補佐で、ずっとただ呆然とする私を何度も気にかけてくれた人




「黎雅の仕事場を見せてやろうと思いましてね。さぁいらっしゃい」


「失礼します……」



ペコリと頭を下げ、若桜さんの後に続く







「ここが黎雅の机ですよ」


そう示された机には、大量の資料やら何やらが散乱していた

まるで今の今まで、誰かがそこで仕事してたみたいに








「彼はなかなか片付けることが苦手な男でしたから、いつも彼の机は物が散乱していて、毎日何かを無くしていましたよ」


若桜さんはその様を思い出したのか笑いを溢した





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