龍の世界
私はその机にそっと触れた
古い年季が入った机
本当に色々な物が入り混じってぐちゃぐちゃになっている
その中に埋もれた、大量の写真
「私の、写真?・・・」
そこには赤ちゃんの頃のものや、
小中高にお兄ちゃんと写った入学式
最近あげた友達と撮ったプリクラまで、デスクに貼ってある
唯一写真立てに飾られているのは、私が新体操で初めて優勝した時のものだった
「すごいでしょう?これが我が桜千会最大の七瀬組組長だなんて、他に知られたら笑われてしまいますよ」
若桜さんが笑いながらその写真立てを手に取った。
「何で…」
今でも鮮明に覚えている。初めて優勝したのは小学校3年生の時だった。
写真は表彰台で、トロフィーとメダルを持って手を振っている
この時、お兄ちゃんは仕事でいなかったはず……
写真なんて、撮った覚えない。
「この写真、いろんな人に配ってましたよ。あなたが初めて優勝したときだそうですね」
「は…い…」
「……この時は、どうしても片付けなければならない仕事がありましてね。
それはもう神業で片付けて会場へ飛んで行きましたよ。結局表彰式にしか間に合わなくて、こっそり写真だけ撮って、直ぐに帰ってきましたよ。
その後何百枚も写真をプリントして、たぶん彼の組の者は全員持っているんじゃないですかね。
黎雅の妹自慢は有名でしたから…
ねぇ麻綾、あなたは────
───とても、愛されていたんですよ」
「…──はい、本当に…」
私は写真から目が離せなかった
鼻の奥がツンと痛くなる
写真の中の私は、嬉しそうに笑っていて……───
「私…、お兄ちゃんに何も返せてないのに────」
もうどうしたって届かない