龍の世界
*****
「本当に全部ある・・・」
案内された部屋は二部屋続きになっていて、一つは普段過ごす部屋で、もう一つは寝室に使う部屋だそうだ。
棚には私の教科書は勿論、雑誌やマンガが揃い、机の上には、お兄ちゃんとのツーショットの写真が立ててある。
「お兄ちゃんは、私がこの世界に関わらないようにしてたのに。皮肉だね・・・私、今日からこの世界に住むんだよ」
写真の中のお兄ちゃんは私の肩に手を置いて、こちらに笑いかけている。
私も無邪気な笑顔でトロフィーを持ってピースをしていた
去年の大会で、個人優勝した時に撮った写真だ
「新体操も、辞めなきゃいけないのかな・・・」
静かな部屋で、私の声はやけに響いた
*****
「会頭、藤堂です」
「入りなさい」
仕事を片付けている最中に呼び出され、幹部の藤堂晶人は会頭の仕事部屋の前で声を掛けた
「失礼します」
一つ挨拶をして、部屋に入った
「麻綾に会いますか?」
唐突に言われ、少しだけ目を開くが、藤堂は直ぐに若桜の目を見た
「会えるのでしたら…」
「部屋は中庭の南側ですよ」
「・・・はい。ありがとうございます」
晶人は正座のまま手を床に付き頭を下げた
「麻綾の世話係はあなたにしましたから」
「え・・・」
「湯川は今琉伊に付きっきりですからねぇ」
「はあ・・・」
「とにかく頼みますよ。無理矢理ここに閉じ込めましたから、今頃どうすればいいのか困ってると思いますから」
「ならちゃんと説明してあげればいいじゃないですか」
「それが出来ればあなたに頼みませんよ」
「どうせまたひねくれたやり方をしたんでしょう?」
「柳瀬も同じことを言っていましたよ」
「でしょうね…」
藤堂はこの天下の桜千会の会頭が、たかだか女子高生一人に頭を悩ます姿がどうにも滑稽に思えた。
「本当に全部ある・・・」
案内された部屋は二部屋続きになっていて、一つは普段過ごす部屋で、もう一つは寝室に使う部屋だそうだ。
棚には私の教科書は勿論、雑誌やマンガが揃い、机の上には、お兄ちゃんとのツーショットの写真が立ててある。
「お兄ちゃんは、私がこの世界に関わらないようにしてたのに。皮肉だね・・・私、今日からこの世界に住むんだよ」
写真の中のお兄ちゃんは私の肩に手を置いて、こちらに笑いかけている。
私も無邪気な笑顔でトロフィーを持ってピースをしていた
去年の大会で、個人優勝した時に撮った写真だ
「新体操も、辞めなきゃいけないのかな・・・」
静かな部屋で、私の声はやけに響いた
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「会頭、藤堂です」
「入りなさい」
仕事を片付けている最中に呼び出され、幹部の藤堂晶人は会頭の仕事部屋の前で声を掛けた
「失礼します」
一つ挨拶をして、部屋に入った
「麻綾に会いますか?」
唐突に言われ、少しだけ目を開くが、藤堂は直ぐに若桜の目を見た
「会えるのでしたら…」
「部屋は中庭の南側ですよ」
「・・・はい。ありがとうございます」
晶人は正座のまま手を床に付き頭を下げた
「麻綾の世話係はあなたにしましたから」
「え・・・」
「湯川は今琉伊に付きっきりですからねぇ」
「はあ・・・」
「とにかく頼みますよ。無理矢理ここに閉じ込めましたから、今頃どうすればいいのか困ってると思いますから」
「ならちゃんと説明してあげればいいじゃないですか」
「それが出来ればあなたに頼みませんよ」
「どうせまたひねくれたやり方をしたんでしょう?」
「柳瀬も同じことを言っていましたよ」
「でしょうね…」
藤堂はこの天下の桜千会の会頭が、たかだか女子高生一人に頭を悩ます姿がどうにも滑稽に思えた。