龍の世界
「あぁ、いらっしゃい麻綾」


「皇也、さん・・・?」



最近ではすっかり見慣れた着物姿ではなく、スーツ姿の彼は、どこか疲れたような顔をしていた






「こんな時間にすみません。あなたを連れて来させたのは私です」


「え…」


「実はあなたに会わせたい者がいるんですが、今入院中でしてね…」


「私に・・・、ですか?」


「ええ・・・」






どうぞ、と病室の中に先導され、私は中を見回した
病室と言うにはずいぶん豪華なようだが、中にもやはり見張りのように、人がいた。




その中に隠されるように、守られるようにしていたのは……





病室白とスーツの黒しかない中では異質な存在だった…






その時私を射ぬいたどこまでも冷たく、底が見えない感情の無い瞳は、今でもふと思い出す。










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