龍の世界
*****




白いベッドの上で、上半身を起こしている私と同世代の男の子

目は開いているのに、何も見てはいないようなガラス玉のような瞳の彼





「麻綾、こちらにいらっしゃい」


「ぁ…はい」



若桜さんに背を押され、私はその青年の前に立たされた。





「麗龍」



若桜さんが静かにそう呼ぶと、彼はこちらに視線を向けた。


その瞳に感情は無く、ただ漠然と景色を映している。

そんな感じだ。

なのに刃物のように鋭く、怖いくらい冷たい。

こんな目、初めて見た。






「お前・・・誰・・・」


私を視界に入れた彼は、表情見合う冷たい声でそう言った。





「麗龍……彼女は、彼の妹ですよ…」


「ッ───」





皆無だった彼の表情が動いた。

目を見開き、私を見た。








「黎雅、さんの…」


「そうです」







お兄ちゃんの名を呟いた彼の表情が変わった。

怒っているような、泣き出しそうな、絶望したような、そんな表情…





私には何で彼がそんな顔をするのか全く分からなかった…

私が何も言えずに彼を見ていると、隣に立つ若桜さんに肩を叩かれそちらを向くと、何故か若桜さんまで哀しそうな表情をしていて、私はますます分からなくなる。



「あの、若桜さん?」



私が呼ぶと若桜さんは、男の子の方を向いて



「いいですね?」


一瞬…誰に言ったのか分からなかった。
そして男の子から私に視線を戻す。



そして一つ溜め息を着くと、重々しく口を開いた。




「本当は、もっと早くに言うべきでした。言わなかったのは、私たちが覚悟出来なかったからです…」


「え?」


「あなたの事は、黎雅から聞いて勿論知っていました。だから黎雅が亡くなって、あなたに身寄りが無くなる事を知って引き取りました。それは、あなたを哀れに思ったからじゃありません」

「あの、何の話か私全然…」


そう言うも若桜さんが話すのを止めることはしなかった。







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