龍の世界
「でも……お前は俺を責めなかった。いつも苦しそうなのに、笑っていた……」
「お前の笑顔を見る度に、モノクロだった俺の世界に、少しずつ色が付いた。生きている事が、いつの間にか苦痛じゃなくなった…」
そう言って幾斗はお墓の前に座った。
「いつの間にか、死ぬ事を考えなくなった。俺がここに来たいって言った時皇也さん、すごく喜んでた……」
「若桜さんが?」
「あの人は、俺の保護者みたいなものだから。昔から皇也さんと黎雅さんだけが俺を子供扱いしてくれた……黎雅さんを失ったって分かった時、世界が壊れた気がした」
あの人───
笑って俺に言ったんだ…
『幾斗……笑って、
生きろ────』
その言葉が、
血だらけの笑顔が、
どれだけ俺の重荷になったか──────
今まで笑う事なんて知らなかった俺へ…
最期に遺す言葉が───
“笑えって生きろ”だなんて……────
出来る筈ないと思っていた……────
でも───
俺はあんたと同じ光を見付けた……
「お前が笑いかけてくれる度に、罪が軽くなる気がした……。ここに来られたのも、お前がいたからだな…」
お前がいなきゃ、きっと今も俺は悲劇のヒロインで、現実を受け入れられなかった────