龍の世界
「おっと・・・そうはいかねぇな。そっちのお嬢さん。こっちの世界じゃ最近何かと有名だ」
男はニヤリと私を見て笑った。
背中に冷たい汗が伝うのを感じ、ぎゅっと幾斗のシャツを握り締めた。
「若桜の剣、四天王最強の・・・冷酷ながらも艶やかな華の龍」
それだけで、男が何をいいたいのかすぐに分かった。
華の龍────
それは、お兄ちゃんの裏の世界での、もう一つの名前だ────
「若桜が、華龍の妹を引き取ったとな───」
「「ッッ!!」」
私と幾斗は、その男の言葉に目を見開いた。
なんでこの人が知っているのか
その事は若桜さんたちが隠していた筈なのに…
「うちの姫がたいそう興味を持っていてな。まぁあの人は華龍にも興味を示していたからな。ちょうどいい。そっちのお嬢さんも来てもらおうか」
「ふざけるなッ!こいつは関係ないだろッ!!」
「言ってるだろ。姫が興味持ってんだ。それだけでこっちには関係大有りなんだよ」
「クッ・・・」
幾斗は私を背に庇いながら後退る。
「麗龍・・・大人しく籠の中に戻れ。籠の中の鳥は、所詮籠の中でしか生きられない」
また幾斗体がビクッと跳ねた。
私の腕を掴む手が痛い程に握られる。
私も幾斗もどうする事も出来なくて、ただ互いの体に縋った。
「そこまでにしておいてもらえますか?」
「誰だ・・・」
張り詰めた空間に響いた声────