龍の世界
「うちの子達に何かご用で?」
「………まさかお前が出て来るとはな」
「大切な子達ですから。汚れた黒椿に横取りされぬように見張っておくのは当たり前でしょう?」
「ふッ、相変わらず計算高いな」
墓地の階段の上に現れたのは、見慣れた顔触れだった。
「龍が二匹に神龍ときちゃこっちが不利だな……」
若桜さんを筆頭に、湯川さん、藤堂さん、その他桜千会の人達がズラリと並んでいた。
「未だにしつこく麗龍の周りをかぎ回っていたのは知っていましたから、護衛がいないときに来ると思いましてね」
「チッ」
男は今まで余裕そうだった顔を歪ませ、こちらを向いた。
「忘れるな、麗龍。あの人はお前をそう簡単に逃がしはしない」
「俺はあいつの人形には戻らない」
「あの人の執着心を忘れたわけじゃないだろう?そしてあんたもだ、お嬢さん。覚悟しといた方がいいぜ。うちの姫は君に興味を持った。逃げられると思うな…」
「・・・・」
何を言っているのか全然理解出来ないのに、何故か恐怖を感じた。
「引け」
男の声で、私達を囲んでいた奴等は、あっと言う間に姿を消してしまった。
「怪我はないか?」
近寄ってきた藤堂さんが、傘を差し出してくれた
「はい。私は……」
「幾斗は?」
「平気」
ぶっきらぼうに呟いた幾斗は、口ではそう言うも、体が震えていたのは、幾斗の手を握る私だから気付いたのかもしれない。