龍の世界
本当に生と死の両極端に立っている…
大丈夫だと思ったのに、結構堪えてたんだと、まるで他人事のように感じた。
「命を懸けてとか、そんなのはいらない。幾斗も私も、一緒に帰るの。私は自分の身も守れないお荷物だから、幾斗の負担になっちゃうけど」
いつの間にか琉伊がこちらを向いていた
「私…、どうすればいいのか…分からないから───」
お兄ちゃんの死が、こんなところにも影響してるなんて…
なんだかすごく不安になる……
「約束して…絶対、私の前からいなくならないって……」
涙が落ちたのを感じた。
「約束する…」
顔を上げた先には、幾斗の綺麗な顔があって、真っ直ぐ私を射ぬく目と目が合った。
「黎雅さんの代わりにはなれない。でも、俺が俺のやり方でお前を守る。───約束する、必ず……一緒に帰る。お前の元からいなくなったりしない……」
幾斗がフッと微かに笑った。
初めて見た、幾斗の笑顔────
嫌味の籠もった、いつもの笑顔じゃなくて……
だから私も笑った───
「ありがとう、幾斗」
私と幾斗が
初めて互いを意識したのは
この時だったのかもしれないね
私達は、見えない未来に
僅かでも希望を持っていた
それはまだ私が子供で、
大人の世界に入った意味を
理解出来ていない頃───