龍の世界
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麻綾と同じく部屋に戻った幾斗は、濡れた服を脱ぎ、細身のジーパンを履いただけでタオルを肩に掛け縁側の丸い障子窓を開けた。
未だ雨は止まず、美しく庭師に整えられた屋敷の庭は静かだった。
煙草を取り出し火を付ける。
考える事はただ一つ……
あの椿の男─────
「死ね」
「誰が?」
「・・・・麻綾」
気配に敏感な幾斗は私が近付くのを分からなかった事が無い。
なのに今は、私が声を掛けて初めて気付いた様子だった
「何してるの?そんな格好して。いくら夏だからって風ひくよ?」
「煙草吸ってる」
「さっきの事、考えてるの?」
「・・・・」
「幾斗は顔に出過ぎだよ」
きっとこの無表情な幾斗を、顔に出過ぎ。などと言う輩は、後にも先にも麻綾だけだろうと幾斗は内心思った。
「窓閉めなよ。部屋濡れるよ?それに疲れたでしょ?」
「別に」
「ダメだって。病み上がりなんだから。煙草だって控えなきゃ」
ちらりと見えた幾斗の腹には引きつったような丸い小さな傷痕が二つ
それが何の傷痕かは聞いていないけど、何となく分かる気がする。
まだ赤く腫れているのを見れば、最近の傷痕だと分かる。
「ココアでも飲もうかな…。幾斗はコーヒーのがいい?」
「…あぁ」
「分かった。煎れてくるね」
私の後ろに素直に続く幾斗を振り向いて笑った。
麻綾と同じく部屋に戻った幾斗は、濡れた服を脱ぎ、細身のジーパンを履いただけでタオルを肩に掛け縁側の丸い障子窓を開けた。
未だ雨は止まず、美しく庭師に整えられた屋敷の庭は静かだった。
煙草を取り出し火を付ける。
考える事はただ一つ……
あの椿の男─────
「死ね」
「誰が?」
「・・・・麻綾」
気配に敏感な幾斗は私が近付くのを分からなかった事が無い。
なのに今は、私が声を掛けて初めて気付いた様子だった
「何してるの?そんな格好して。いくら夏だからって風ひくよ?」
「煙草吸ってる」
「さっきの事、考えてるの?」
「・・・・」
「幾斗は顔に出過ぎだよ」
きっとこの無表情な幾斗を、顔に出過ぎ。などと言う輩は、後にも先にも麻綾だけだろうと幾斗は内心思った。
「窓閉めなよ。部屋濡れるよ?それに疲れたでしょ?」
「別に」
「ダメだって。病み上がりなんだから。煙草だって控えなきゃ」
ちらりと見えた幾斗の腹には引きつったような丸い小さな傷痕が二つ
それが何の傷痕かは聞いていないけど、何となく分かる気がする。
まだ赤く腫れているのを見れば、最近の傷痕だと分かる。
「ココアでも飲もうかな…。幾斗はコーヒーのがいい?」
「…あぁ」
「分かった。煎れてくるね」
私の後ろに素直に続く幾斗を振り向いて笑った。