龍の世界
ハァッ
ハァッ
無我夢中で走った
何も見えない
何も聞こえない
体の機能を失ったかのように・・・・
ただ自分の鼓動だけが、鮮明に頭に響いてくる
国立××総合病院
地下の、暗置室と掛かれたプレート。
「ハァッ、ハァッ」
扉に体当たりする勢いでその扉を開いた
中にいた視線が一斉に突き刺さるが、気になどしていられなかった
「ハァッ、ハァッ、・・・・う、そ・・・───」
そこには顔に白い布を被せられた男性が横たわっていた
顔は見えないのに、それがお兄ちゃんだと、私には分かった
「嘘、でしょ?・・・」
私はふらふらで不安定な足取りで、しかし真っ直ぐ兄の元へ向かった
「嘘・・・、だって…明日には帰って来るって・・・・今日の夜にメールするって」
言いながら、体は心より反応が早いのか、自然に涙が溢れてくる
私はお兄ちゃんが横たわるベッドの横に崩れ落ちた
「嘘、でしょ…お兄ちゃん……」
返事はなく、痛い程の沈黙だけが続くばかり
「嫌、嫌ッ、お兄ちゃんッ!嫌あ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁッ!!!」
お兄ちゃんの体に抱き付き泣き叫んだ
お兄ちゃんの体は冷たくて、硬くて、生きてる気配なんて全く無くて・・・・
「お兄ちゃんッ!!、お兄ちゃんッ!!起きてよッッ、起きて私に笑い掛けてよッ、いつもみたいに笑ってよッッ!!!ねぇ、お兄ちゃんッッ!!!」
どれだけ叫んでも、体を叩いても、その体は決して動かない
体力が切れた私は再び、お兄ちゃんの体に突っ伏すように顔を埋めて崩れ落ちた
「一緒に、ヒクッ…過ごそうって、ヒクッ、言った…のに・・・」