龍の世界
でも…
それでも…
「分かってるよ。皇也の隣でずっと見てたからね」
「・・・柳瀬」
「何?」
「例の件、お願いしますよ」
「ああ、分かってるよ」
若桜は相変わらず庭を見たまま・・・
柳瀬は目を伏せて、静かに笑っていた。
*****
「ねぇ、麻綾ー」
「あ、お疲れ」
今は個人レッスン中で、私は既に終えて、休憩中。
スポーツ飲料を飲みながらストレッチをしていた時、比較的仲が良い。
そんな彼女が話し掛けてきた。
「ねぇ、あの人彼氏?」
「え?あの人?」
「ほらッ、最近バイクで送り迎えしてる人!」
彼女に詰め寄られ、少し体を引いた。
こいつは周りが自分より勝るのが気に入らないのだ。
私に彼氏が出来たのか、気になって仕方ないんだろう。
「あぁ。彼氏じゃないよ。仲はいいけど」
流石に嘘を言うのは嫌なので正直に話しながら、調子に乗らせたくないので、最後のは私なりの強がりだ。
「へぇー・・・そう」
彼女はたいした事は言わず、自分も休憩に入って行った。
「なんかムカつく・・・」
「麻綾ー、次入れ」
「はいッ」
私はコーチに呼ばれ、再び練習にのめり込んだ