龍の世界
*****
今回襲撃騒動は、私には詳しくは知らされなかった。
だけど、何かが動き出したことに気付くのに、時間はかからなかった。
私の世界が動き出す──
そう、何かが教えてくれた────
*****
「あ、おはよう幾斗」
「おはよう…麻綾」
騒動から一週間。私の生活は、以前と何ら変わりはない。
変わったと言えば、以前にも増して幾斗と行動を共にするようになった。
椿の花は、あれ以来何度か私の前に現れる。
下駄箱から始まり、よく友達と行くカフェや、新体操クラブ、一番最近では友達との出かけ先で知らない子供に渡された。知らない人に頼まれたと言うことだった。
花は、初めは白椿で、少しずつ色が濃くなっている。
今は淡い灰色。
まるで何かのカウントダウンのようで怖い……
桜千会ではあれから警戒態勢が保たれたまま。
屋敷に出入りする人たちは、どこかピリピリした雰囲気で、隙がない。
味わった事はないがきっと戦場の空気はこのような物だろうか…
初めて味わう雰囲気に、私は少しだけ落ち着けない。
「じゃあね、幾斗」
「ああ、何かあったら連絡しろ」
「うん。行ってきます」
幾斗は言わないが、あれから体調が悪そうにしている。
本人は隠しているつもりだろうが、私でも気づくことに皇也さん達が気づかない筈がない。
つい忘れそうになるが、幾斗は最近まで入院していたのだ。
また体調を崩せば、病院に逆戻りもありえる。
無理なんかしないで、素直に辛いときは辛いって言えばいいのに、幾斗の性格では一生無理だろうなと結論して、私は玄関で待っていた車に乗り込んだ。
今回襲撃騒動は、私には詳しくは知らされなかった。
だけど、何かが動き出したことに気付くのに、時間はかからなかった。
私の世界が動き出す──
そう、何かが教えてくれた────
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「あ、おはよう幾斗」
「おはよう…麻綾」
騒動から一週間。私の生活は、以前と何ら変わりはない。
変わったと言えば、以前にも増して幾斗と行動を共にするようになった。
椿の花は、あれ以来何度か私の前に現れる。
下駄箱から始まり、よく友達と行くカフェや、新体操クラブ、一番最近では友達との出かけ先で知らない子供に渡された。知らない人に頼まれたと言うことだった。
花は、初めは白椿で、少しずつ色が濃くなっている。
今は淡い灰色。
まるで何かのカウントダウンのようで怖い……
桜千会ではあれから警戒態勢が保たれたまま。
屋敷に出入りする人たちは、どこかピリピリした雰囲気で、隙がない。
味わった事はないがきっと戦場の空気はこのような物だろうか…
初めて味わう雰囲気に、私は少しだけ落ち着けない。
「じゃあね、幾斗」
「ああ、何かあったら連絡しろ」
「うん。行ってきます」
幾斗は言わないが、あれから体調が悪そうにしている。
本人は隠しているつもりだろうが、私でも気づくことに皇也さん達が気づかない筈がない。
つい忘れそうになるが、幾斗は最近まで入院していたのだ。
また体調を崩せば、病院に逆戻りもありえる。
無理なんかしないで、素直に辛いときは辛いって言えばいいのに、幾斗の性格では一生無理だろうなと結論して、私は玄関で待っていた車に乗り込んだ。