龍の世界
信じられ無かった…
こんな真っ昼間に……
こんな住宅街で……
こんな堂々と……
私は無意識に幾斗をきつく抱き締めた。
体は強ばり、視線を外すことが出来ない。
「久し振りだな、麗龍。それに…龍のお姫様」
どうして…
まだあの襲撃事件から一週間しか経っていない。
幾斗の心はまだ…
幾斗のあんな苦しそうな笑顔は見たくない。
私は幾斗を護るように、視界に入れないように幾斗の頭を抱き締めた。
白い制服が赤で染まろうが、気にならなかった。
「どうして…」
それでも、発せられた声は情けないくらい震えた。
「どうして?また無粋な質問だな。迎えに来たんだよ、お前達を…」
「何、言って…」
男は一定の距離を保ったまま動かない。
しかし何か怖いモノが迫って来るような感覚に陥った。
無意識に体は後退りしようとするが、幾斗を抱き締めたままなので、男との距離を広げることなど出来なかった。
「遊びは終わりだよ、お姫様…」
ビクッ!!
(もう、駄目…捕まるッ……)
「ふざ、けるなよ…」
「ッ!!……幾斗ッ」
「麻綾、絶対離れるなよ」
意識を失ったと思っていた幾斗が、私の肩を強く抱き締めた。
それは痛いくらいに…