龍の世界
彼らの手にあるのは鈍く黒光りするソレ。



いつ、ソレがこちらに向けられるか分からない。













「…いく、と…」





「麻綾、合図をしたら目を閉じろ」


「え?」


「いいから。出来るだけ息もするなよ」


「え、何?」


「…3」


「え、ちょ!」


「2…、1…」










私は口を手で押さえ、目をぎゅっと閉じた。














シュー


パンパンッ






「おいッ何だ!」


「うわぁぁ!」


「おい、どうした!…う゛あ゛ぁあ!」












辺りは喧噪に包まれた。だが私には何が起きたのかは分からない。


分かるのは、声を挙げているのがさっきまで私達を追い詰めていた人達で、声を挙げさせているのは幾斗では無いと言うこと。




何故なら私は未だに幾斗に抱き締められているからだ。








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