龍の世界
「全く…無茶しちゃ駄目じゃないか…ほら、幾斗はこっちに来て」
柳瀬さんは幾斗の手を引き一台の車に向かった。私はそれを見送り、放られていた荷物を集めた。
「麻綾」
「……藤堂さん…」
何人かはあの人たちを追っていったのか、ほとんど人はいなかった。
10人も残っていない。
「間一髪だったな…こんな真っ昼間から堂々と…どうやら向こうもそろそろ焦ってきたみたいだな…」
「え…?」
「まぁ、とにかく無事で良かった。だが、しばらく外出はあまりしない方がいい。たぶん…これからは」
藤堂さんの言いたい事は何となく分かる…
私だってそこまで馬鹿じゃない…
この世界を知ってまだ少ししか経っていないけど、もう無知ではない…
「また今以上に不便になるかもしれないが…」
「はい」
前なら納得出来ずにいただろう。
しかし今は、どの道を選択するのが自分の為なのか、理解できる。
私は素直に藤堂さんに頷いた。