先生の秘密

店外に出ると、夏の日差しと湿気が容赦なく肌を刺激する。

中山の白いシャツが光を反射して眩しい。

繋いでいる手が熱い。

中山の手は淳一の大きくて、硬くて、繋ぎ心地が全然違う。

どちらがいいとか悪いとかはないけれど、人によってここまで手の感触が違うことに驚かされた。

中山に連れてこられたのは、バッティングセンターだった。

金属バットに珠が当たる音や、バットに当たらなかった珠がマットにぶつかる音が、あちこちから聞こえてくる。

私が足を踏み入れたのは初めてだった。

そして今、元剣道部主将が竹刀ではなく、バットを振るのを眺めている。

“カキーーン”

“ボスッ”

“カキーーン”

時速120キロの球を、中山は高確率で前に飛ばしている。

“カキーーン”

汗が似合うなぁと、しみじみ思う。

鍛えられた逞しい腕や広い背中に、男の魅力を感じる。

私は昨年の淳一との恋愛への未練に囚われて混乱しているだけで、本当はとっくに中山が好きなのかもしれない。

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