先生の秘密
“カキン”
“ボスッ”
“カコッ”
どんなタイミングで、そしてどれくらいの高さでバットを振ればいいか、だんだん感覚が掴めてきた。
闇雲ではなく狙いを定めて、ただし日頃の鬱憤を晴らすように力いっぱい振る。
球がバットに当たりはじめて何球目かで、いよいよそのときがくる。
“カキーン”
打球は快音と共に、綺麗に前方へと飛んでいった。
バットから手に衝撃が伝わって、軽い痛みが走る。
だけどそんな痛みなど、溜まっていたフラストレーションが吹っ飛んでいった快感にかき消され、爽快感だけが体を駆け巡る。
「打てた!」
中山の方を振り返って喜ぶ。
「前見て! 次、すぐ来るよ!」
「えっ?」
“ボスッ”
「きゃあ!」
その後は1球も前に飛ばせなかったけれど、動いて叫んではしゃいで、バッターボックスを出たころにはスッキリした気分になっていた。
「初めてやったし全然飛ばせないけど、バッティングっておもしろいね」
汗をかいた体に、スポーツドリンクが沁みる。
「だろ? スッキリしたいときはこれに限るね」